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読書はこころの灯火

【おすすめ本】『余命10年』生きるって、しんどくて美しい

こんにちは。

365日読書をしているほたるです。

 

今回おすすめするのは、

小坂流加(2007)『余命10年』

です。

 

 あと10年しか生きられないとしたら、

 あなたは何をしますか。

 長いと思い悠然と構えられますか。

 短いと思い駆け出しますか。

 あと10年しか生きられないと

 宣告されたのならば、

 あなたは次の瞬間、何をしますか。

 

 

上記は、本著の1章に掲げられた問いです。

 

主人公の茉莉は、20歳の時、

自分が余命10年の不治の病にかかっていることを知ります。

 

就職することも許されない。

厳しい食事制限もある。

たくさんの薬を飲まなくてはならない。

……どんなに努力しても、確実に「死」に向かっていく。

 

短いような長いような「10年」。

その先の「死」を見つめながら生きる茉莉の心の葛藤が、

痛いほどに伝わる小説です。

 

 

2022年3月には、

小松菜奈さん主演で映画化もされました!

 

わたしは先に映画を見て、

ボロ泣きしたので原作を読んでみました。

 

ちょっと驚いたのは、

茉莉や、その恋人となる和人の設定など、

原作と映画ではかなり違っていたことです。

 

どうやら映画は、

原作者・小坂流加さんの人生に寄せて作られたようですね。

 

実は小坂流加さんは、

2017年に原発性肺高血圧症という病気のため亡くなっています。

亡くなったときは、まだ38歳。

 

作中に茉莉の病名は出てきませんが、

その症状の描写などから、

同じ病気であろうと考えられます。

 

ぴんぴんした健康な作者が描く

「病気もの」を下げるつもりは全くありません。

想像力は人が持つ素晴らしいパワーです。

わたしもそういった泣ける話は大好きなのですが、

本著はやはり、一味違いました。

 

 

『余命10年』は2007年に刊行され、

その後大幅に加筆・修正して文庫化されています。

小坂流加さんは、

文庫版の刊行を待たずして亡くなりました。

 

加筆部分は、作者が晩年に描いたものです。

まさに死に直面した作者の心の叫びが、

茉莉の声を通して、強く響いてくる作品なのです。

 

 

余命は10年ではないかもしれませんが、

人は必ず、いつか死にます。

 

その時を目前にしたら、何を思うでしょう?

どんな風に生きれば、後悔をしないでしょうか?

 

 

何かに情熱を燃やせるのは素敵だな。

行きたいところに行けるのは恵まれているな。

大切な人と目を見交わして、

「大好き」と「ありがとう」を伝えられるのは幸せだな。

 

今自分が手にしている当たり前の日々を、

大事にしながら生きていきたい。

読了後、洟をすすりながら、そんな風に思いました。

 

 

何気なく過ごしてしまっている一瞬一瞬のきらめきを、

改めて感じさせてくれる一冊です。

 

ぜひご一読ください。

あなたの人生の糧になりますように✨